「市ヶ谷くん、ワタシたちは向こうよ。行きましょう」

「あ、あぁ」


春日さんに促され、仕方なく持ち場に向かう。


「あの子のこと、そんなに気になる?」

「は?」


意味ありげな顔で春日さんがこちらを覗いてくる。


「あの子、F組のアンカー候補だったらしいんだけど何か理由があって欠場になったって、さっき美河原くんから聞いた」

「欠場?」

「そうねぇ、それくらいしか出る予定なかったみたいだし、運動神経良いのに花形のリレーにしか出ないから他の人からは散々なこと言われてたみたいよ。

だから、出場を断念するしかなかったのかもね。

でも仕方ないのにねぇ。

あの子、昨日からずっと怪我人の手当てしたり、熱中症で倒れた子の救急車に乗って病院まで行ったりしてたから」

「えっ......」


マジ、かよ......。

だから、昨日も今日もいなかったんだ。

自分のことを犠牲にしてまで他人を......。


「あら?その顔は...まさか知らなかった?」


オレはこくりと頷いた。


「ワタシ余計なこと言っちゃったかしら?知らない方が良かったかもね」

「いや、ありがとう。感謝してる」

「あの子にうつつ抜かさないでね。頼むわよ、アンカーさん」

「分かってる」