「久遠由紗ちゃんだっけ?」


突然、羽依が話し出した。


「あ、うん」


そして、オレの手をぎゅっと握る。


「わたし、あの子苦手だな」


えっ?

オレは羽依の横顔を見つめた。

不安そうな、何かに怯えているような、そんな顔をしている。


「だってあの子......」


目が合う。

オレの心の奥底までを見通せるような大きな漆黒の瞳だ。

その瞳の奥にはどんな景色が眠っているのだろう。

たぶん、そんなこと考えなくても

分かる。


「さっくんのこと、盗っちゃいそうなんだもん」