結局家に戻って来たのは午後10時30分。

完食直後はアイスを10本も食べたせいで体が冷えまくり、初夏だというのにブルブル震えていた。

今はなんとか歩いてきて暖まっているから良いが。

で、良くないことが1つ。

いや、2つ、か。

まず1つ。

オレは久遠に言えなかった。

オレの願い事を悟ってわざわざアイス限界食べを提案してきたんだろう。

オレはあの時、こう言いたかったんだ。

オレの願い事は......

久遠、

お前のためにやれることなら、

なんでもしてやりたい。

そう、

思ってしまった。

久遠が1人きりで背負っている何かをオレにも共有させてほしいと、そう願いたいと思ってしまった。

あんな顔されたら、

尚更だ。

街灯に照らされた横顔は、

オレのカノジョ、羽依には劣るが、

でも、

でも、だ。

久遠の横顔は、

儚くて

切なくて

呼吸をするのも惜しまれるくらい見入ってしまうほど美しく、

触れたらパリンと音を立てて割れてしまいそうなほどに繊細だった。

久遠、

お前は何を抱えているんだ?

お前はなぜそんなに人に尽くせるんだ?

それはもしかして、自分の人生を諦めているから、なのか?

自分の分まで人に...とか、思ってるのか?

そんなこと、思ってるんだとしたら、

なぜ、諦めてるんだ?

過去に何があったんだよ。