「おーい。ワンコ、どうしましたかー?」

「あっ、いや、何でもない」


いきなりオレの目の前に現れて手をぶんぶん振ってくる久遠。

なんだよ。

元気じゃん。

だけど、

なぜだ?

なぜ、久遠は...寂しそうなんだ?


「それにしても、今日は残念したねー。
一応持ちましたけど、今にも雨が降りそうっす」

「あぁ」

「会えてほしかったすね、織姫と彦星。1年に1回だけなんすから。会いたくても...会えないんすから」


その言葉を聞いて、オレの考えは確信に変わった。

久遠はきっと......


「久遠」

「はい」


平気なふりしてるけど...そうじゃないんだよな。


「オレの願い事、聞いてくれ」

「あー、はい。どーぞ」


オレの願い事は...

オレの願い事は...だな......


「オレの願い事は......」

「願い事は?」


くそ。

ここまで出かかっているのに、出てこない。

言え。

ちゃんと思ったこと、

言えよ。

しっかりしろ、オレ。