「あのさぁ」

「あのですね」


ほぼ同時に口を開いた。

ったく、合わせて来るなよ。

なんて思ったから目は合わなかったが。


「皆さん、誤解なさらないでください。ワンコにはちゃんと私より可愛いカノジョさんが居ますから」


そうそう。

その通りだ。


「あっ、そうなんですか」

「すみません。勝手に茶化して」


深沢さんと三科さんがぺこりと頭を下げる。

いや、悪いことは何もしてないんだけどな。

謝られるとオレも謝りたくなる。


「こちらこそすみませんでした。誤解を与えるような言動は、以後慎みますんで。では、流し素麺、再開しまーす」

「なら、わたしも手伝いますっ!」


にゃんにゃんと久遠が素麺を次々と流していく。

オレはその様子を下流で見守りながら、頭の中をぐるぐるする不思議な感情に侵されないよう、適度に箸をのばしていた。