「で、もう1度聞きます。なんでこんな時間にひょっこり来たんすか?何か訳ありなんでしょう?」


聞いてあげると嬉しそうに体をくねらせる。

正直、既婚者でこれだと、引く。

JKすか、あなたは?

と聞きたくなる。


「いやぁ、それがねぇ、うちのダンナ、テニス部の顧問じゃな~い。その付き添いで私も行ったのよ~。そしたら気になる子がいてね~。ほらぁ、今年になって入部した~、いや、させた~、あの子。確か名前は...」


名前をなかなか覚えないのもいつものこと。


「市ヶ谷朔空。通称ワンコ」

「あっ、そうそう。ワンコくん。

って、ワタシがワンコくんはまずいか。じゃあ、市ヶ谷くん。

そう、その市ヶ谷くんが試合見に来たはずなのにどこか上の空って感じで~。

もしかして今日のこと悔やんでるんじゃないのかな~なんて思ったりしてね~。

で、由紗ちゃん、怒らないであげてね~ってそう言うこと」


怒る?

私が怒るわけないっすよ。

怒るのはよっぽどのことがあった時。

そうっすね...例えば......

大切な人を殺されかけた時、とか。

大切なものを誰かに略奪された時、とか。