「ワンコ」

「ん?なんだ?」


突如鼻歌を止め、話しかけてきた。


「月の見えない空もキレイっすね」

「そうか?月が見えてた方が、なんつうか、その...幻想的じゃねえか?しかも月が無いと寂しいし」

「いや、そんなことないっす。月が見えない夜空は一層星を煌めかせるんす。ないからこそ映えるってことっす。

名もなき星たちにも目を配れるようになる。そういう空も私は好きっす。

優しいっす。温かいっす」

「そっ、か...」


久遠の言葉が、まるで水槽に1滴絵の具を垂らした時のように、胸にじんわりと染みていく。

自分の名前を肯定されているみたいで、なんだかちょっと恥ずかしくてむず痒いけど、温かい。

胸の底から全身に温かい血液が流れていく。

そんな気がした。