【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「たのしみにしています」

「あ、の、」

「ベッドで待っててください。俺のかわいい奥さん」


にっこりと微笑んで、私の頬を撫でてバスルームへと歩いて行ってしまった。

へなへなと倒れ込んでしまいそうな体を叱咤して、おぼつかない足取りで、ベッドに縺れ込んだ。

どうしようもなく混乱していたところまでは、覚えている。


「柚葉さん?」


つまり、私も連日の勤務で、疲れきっているわけで、誰かに耳元で囁かれる音を聞きながら、深く眠りの海に誘われてしまった。


「ゆずは?」

「寝顔もかわいいから、まいるな……」



やさしい声が、聴こえていたような気がする。



睡眠の質はとてもよくて、あんなにも悶々としていたことすらすっかり忘れてしまっていた。

やさしい指先が髪を撫でつけている。

おもわず頬ずりしてしまいたくなるようなあたたかい手に、頬がほころんでしまった。

夢うつつに、額に何かが触れて、何度も聞いたようなあまい音を鳴らされた。

夢の中で、遼雅さんの瞳がとろけそうに笑んでいる。


すきだなあ。

誰に告げるでもなく、唐突に思って、目が開いてしまった。


「あ……」

「うん?」


今、私は何を考えていたのだろう。

呆然として、私の顔を覗き込んでいる人と目が合う。しばらく見つめあって、ようやくそれが、夢の中の人と同一人物であることを思い出した。