囁きの合間なのか、それとも口づける隙間なのか、どちらとも言えないくらいの近さで口遊んで、ちゅう、と吸い付いてくる。

遊ぶようなキスに酔っている。

お風呂から上がってかなりの時間が経っているはずなのに、のぼせてしまいそうな気持ちがしていた。


「お仕事、おつかれさまでした」


やわい唇の触れ合いが一向に止まりそうにないから、つぶやきながら、もう一度すぐ近くに寄せられた口元に手を当てた。

遼雅さんは私の動作に瞳をやわらかく笑わせて、寄せられた手をやんわりと握りしめてしまった。


「りょう、」

「帰ってきたら……」


遼雅さんに指先を捕らえられた左手には、帰ってきて一番に嵌めなおしたシルバーリングがかがやいている。

あまく微笑んだ人が確認するように見つめて、王子様のように指輪へ口づけてくれる。


「帰ってきたら、かわいい奥さんが待ってくれていたから、もう元気になりました」

「それは、うそです」

「あはは。信じて」


指通りを確認するように髪を梳かれる。ようやく帰りの挨拶に満足できたらしい人が「俺も着替えてきます」とつぶやいたのを聞いて頷いた。


「ごはんにしますか? お風呂もすぐに入れますよ」

「……いい匂いがする。もう食べましたか?」

「いえ、もうすこしかなと思って、待っていました」