【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


橘さんは、どこにいても人目を集めてしまうような王子様だ。

必死で説得しようとしていた。こんなふうに自分を安売りしなくても、大切にしてもらえる人だと思う。


「いいですか? もうこれは、しちゃだめです」

「……うん、わかりました」

「ほんとう? もうしない?」


掌《てのひら》にのせた手が、下からきゅっと掴まれる。

俯いたその人が、私の手を見つめていることに気づいた。叱られた子どものような姿に、胸があまく痺れてしまった。

本当に、どうしたらいいのだろうか。


「――しないように」

「はい?」

「しないように、柚葉さんが見張っていてください」

「ええ……?」

「柚葉さんが側にいてください」


乗せていた左手の指の先を、きゅっと掴まれる。

狼狽えているうちに、指先が橘さんの口元へ寄せられた。恭《うやうや》しく頭を垂れた人が、手の甲にやわい口づけを落としてくれる。


「たち、」

「側に、いてくれますか?」


本当に、どうしてこんなことになってしまったのか、すこしもわからない。


「でも、」

「ご両親はどちらに住んでいるんですか? 来週、お邪魔できればいいんですが」

「あの、」

「新居はもうすこし、広いところにしましょう。ベッドは大きなものを」

「ベッド……?」

「ああ、肝心なことを忘れていました。柚葉さん」