懇願するような瞳だ。
ロックナンバーを口遊みかけた人にぎょっとして、綺麗な唇を両手で塞いだ。
「な、に言ってるんですか?」
「ん、」
もごもごしかける橘さんの唇に気付いて、ぱっと手を離せば「安心してもらえるかと思って」と言われてしまった。
逆に不安になる。
びっくりして狼狽えてしまった。
「柚葉さん、瞳が震えてる」
ぴくりと肩が反応してしまった。
まっすぐに見つめられると逸らせなくなる。
手の上に携帯を置かれて、もう一度「見てください」と囁かれてしまった。私に対して誠実であろうと思っていることは良く伝わった。
やり方がだめだ。くらくらしながら、必死で携帯を握りしめている。
「たちばなさん」
「うん?」
「手、だしてください」
「はい」
疑うことなく差し出された両手に、おかしな気分になった。お手を待たれているみたいだ。
左手の上に携帯を置きながら、両方の手を橘さんの手のひらの上に乗せる。
「うん?」
やさしい声が問うてくる。あまい音程で胸がしびれてしまった。
これはもう、すぐに好きになってしまいそうだ。どうしたらいいだろう。
「橘さんの心は、橘さんのものです」
「俺の?」
「はい、だから、隠してもいいんです。……たくさん、いろんなものを大事にできる人のほうが、すてきです。こんなことをしなくても、そばにいてくれる人が、たくさんいます」
ロックナンバーを口遊みかけた人にぎょっとして、綺麗な唇を両手で塞いだ。
「な、に言ってるんですか?」
「ん、」
もごもごしかける橘さんの唇に気付いて、ぱっと手を離せば「安心してもらえるかと思って」と言われてしまった。
逆に不安になる。
びっくりして狼狽えてしまった。
「柚葉さん、瞳が震えてる」
ぴくりと肩が反応してしまった。
まっすぐに見つめられると逸らせなくなる。
手の上に携帯を置かれて、もう一度「見てください」と囁かれてしまった。私に対して誠実であろうと思っていることは良く伝わった。
やり方がだめだ。くらくらしながら、必死で携帯を握りしめている。
「たちばなさん」
「うん?」
「手、だしてください」
「はい」
疑うことなく差し出された両手に、おかしな気分になった。お手を待たれているみたいだ。
左手の上に携帯を置きながら、両方の手を橘さんの手のひらの上に乗せる。
「うん?」
やさしい声が問うてくる。あまい音程で胸がしびれてしまった。
これはもう、すぐに好きになってしまいそうだ。どうしたらいいだろう。
「橘さんの心は、橘さんのものです」
「俺の?」
「はい、だから、隠してもいいんです。……たくさん、いろんなものを大事にできる人のほうが、すてきです。こんなことをしなくても、そばにいてくれる人が、たくさんいます」


