【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】



何を言ってしまっているのだろうか。

しどろもどろに告げれば、目の前の貴公子がいっそう綺麗に微笑んでしまった。



「――じゃあ、来週は柚葉さんのご両親に、挨拶に伺います」



衝撃的な一言から、記憶はあいまいだ。

ただ、かなり酔っぱらっていたことは覚えている。ふらふらする私を支えながら、橘さんが何度も声をかけてくれていた。


「柚葉さん、帰れますか?」

「ゆずはさん」

「俺の家に、連れ込みますよ?」


どろどろと甘い声だけが聞こえていた気がする。

踏み込んで、やわらかなソファに乗せられた時、ようやく自分が大きな失態を犯してしまったことに気づいた。


どこからどう見ても、私の部屋じゃない。

整頓されている部屋は、橘さんの匂いであふれかえっている。瞬時に立ち上がろうとして、転びそうになったところを抱き起された。

たまらなく落ち着く匂いがする。


「……大丈夫ですか?」

「あ、ごめんなさ、い。飲みすぎ、ました」

「いえ、俺も勧めすぎてしまいました」

「そんな、ええと、ごめんなさい、お家にまで……」

「プロポーズしてすぐに連れ込んだりして、軽蔑されないかちょっと焦ってます」


申し訳なさすぎて俯く私をそっとソファに乗せて、笑いを誘うように告げてくれる。

橘さんのことを好きにならない人なんて、この世界のどこにいるのだろうか。

ぼうっと見上げたら、首を傾げた人が思い出したように携帯を取り出した。


「どうし、」

「携帯、見て良いですよ」

「うん、と?」

「俺には柚葉さんだけです」