狼狽えている。
とりあえず、橘さんに差し出されるまま、もう一杯のワインで口を潤して、回らない頭で考えている。
指に触れていた手は、いつの間にか繋ぎ合わされている。どうしてこうなっているのか、すこしもわからない。
「ええと、私、冷え性で」
「うん、手が冷たいから、心配してました」
「あ、う……、そ、れで、あの、夜も、冷たくて目が覚めちゃうんです」
何を言っているのか、自分で自分がわからない。
かなり酔っていると自覚して、ひどくお酒のペースが進んでいることに気づいた。まずい、これはまずい。
「だから、抱きしめて眠ってほしくて」
「そうされればゆっくり眠れるんですか?」
「そう、ですね、ええと……。それくらい、です」
「なるほど。わかりました。かわいいお願いだ」
指先がなぞられる。
熱に溺れて、倒れてしまいそうだ。こんなにも熱いまなざしをくれる人だっただろうか。酔っぱらいすぎてそう見えているだけなのか。
「どうしようもなく、あまやかしたい」
「な、にを?」
「奥さんになる人のことは、とことんあまやかしたいです。ダメですか?」
熱い瞳に胸が鳴ってしまった。この人に愛される人は、どんな人だろう。想像もできない。
「すてき、なことだとおもいま、す」
「よかった。嫌じゃないなら安心です」
「あ、えと、私は……、その、誰かに見つからないところでなら、とは思いますけど」


