【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


ダメに決まっている。焦っていれば、「俺とは、嫌ですか」と聞かれて瞬時に首を横に振っていた。


「嫌なんて、とんでもないです」

「じゃあ、いいですか」

「じゃあって……」


嫌いじゃないなら貰って欲しいと言われて貰う物のような、お裾分けみたいに差し出されている気がする。

どうしたらいいのかわからず、「ワイン、もうすこし飲みますか」と聞かれて、逃げるように首肯した。


サーブされるまま呑み込んで、楽しそうな瞳にどぎまぎしてしまう。

どうしよう。どうしたらいいだろう。

慌てすぎて、橘さんに握られている手を放すことすら忘れてしまっていた。きゅっと力を込められて、肩が上ずった。


「俺のこと、好きにならなくて良いです」

「あ、う」

「仕事も続けて良いです。……ここは会長の後ろ盾もあるので、絶対です。もちろん家庭に入りたいなら、それもいいです。俺が働きます。なるべく楽しく、あたたかい家庭にしたいです」

「え、と」

「もし仮に、俺が誰かを依存させるようなことを仕出かしたら、止めてもらえますか?」

「それは、あの、いつでもできますが……」

「ありがとう。柚葉さんは、他に約束にしたい条件はありますか?」

「え、あの……、ちょっと待ってください、全然整理できなくて」