三度目のデートは、いかにも高級そうなフレンチのお店で、ディナーを楽しむことになっていた。
内容ばかりが素敵なデートで、私たちの間柄は、上司と部下からちょっとした知り合いに変わったくらいだと認識していた。
「ええと、今なんて?」
「うん、柚葉さんの、結婚相手への条件を教えてほしいなと思って」
綺麗に並べられたカラトリーを、ひっかけて落としそうになった。
動揺なんてものではない。
一度目は申し訳なさそうで、二度目には困った顔をしていた。三度目に会った橘さんは、なぜかどこまでもやさしい瞳で私のことを見つめている。
丸いテーブルなのに、席は隣だ。目の前は一面ガラス張りになっていて、高層からの夜景がばっちり視界に入ってくる。
「条件……、ですか?」
「うん、先に聞いておきたいんだ」
先に、とはどういうことだろう。話についていけない。
とにかくおかしなことになっていることだけはわかって、必死に打開策を探っていた。
何となく、橘さんが考えていることがわかってしまう。悲しいことに、先日提案した私のアイデアを受け入れると、この結末になってしまう可能性があることに気づいてしまった。
橘さんは、私が自分に好意を持たないことを確信しているのだろうか。
「柚葉さん、教えてくれませんか?」
「う、」


