【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「……それは、光栄なことだけど」

「依存まで行ってしまったら、大変ですね」


可愛いなんて面と向かってあっさりと言ってしまう人だ。きっとどこまでも優しくされて、手放しがたくなってしまうのだろう。

ふいに思いついて、悩ましい表情を作っている人の目を見据えた。


「橘さん」

「うん?」

「橘さんのこと、すこしも意識していないような女性と結婚されたら、いいんじゃないでしょうか?」


我ながらいいアイデアだと思った。

私の声に、橘さんが目を丸くして、立ち尽くしてしまった。水族館で話すような作戦会議ではない。けれど、妙案だと思いついて勝手にうれしくなってしまう。


「ふふ、どうですか?」


この上なく上機嫌で、自分の頬が笑っていることには気づかなかった。私の表情を見た橘さんがますます目を丸くして、またふっと顔をそらしてしまった。


「橘さん?」

「うん、いい提案だね」

「本当ですか? よかったです。私とは、そうですね。会長の気が済むまではこうしておしゃべりして」

「うん」

「橘さんの理想に合うような女性を考えるのは、どうですか?」


二度目のデートで、私はそのように告げたはずだ。



「あの、橘さん?」

「柚葉さん」


それがどうして、こうなったのか。