【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


寂しくなるたびに姉夫婦のマンションに飛び込んで、お姉ちゃんに抱きしめてもらいながら眠っていたのを覚えている。というか、ほんの2年前くらいまで同じことをやっていた。

結婚して、小さな子どもまで育てる姉から、そろそろ独り立ちしなければならない、とは思っていた。

社会人になってからは、どんなに寒くて夜中に目が覚めたとしても、誰かを頼るのはやめようと決めていたところだった。

頭の中で自分の恋愛遍歴を思い浮かべて、苦笑してしまった。素敵な王子様にお話しできるような事情ではない。


「彼氏は、そうですね。しばらくいないです。結婚願望は、ないわけではないですけど……」


姉夫婦のような穏やかな家庭にあこがれる一方で、自分ではできないだろうとも諦めている。


「好きな人も長らくいないので、すこしあきらめ気味です」


好きでいてくれる人なら、どんな人でもいいとは思う。理想と現実は違うとも思う。


「あきらめ気味、かあ。佐藤さん、可愛いから引っ張りだこだろうに」

「ええ? それは橘さんのほうです」

「俺は、うーん、仕事しかしてないつまらない男だよ」

「かっこいいですよ。いつもお仕事に一生懸命で、きらきらしています。きっと素敵な橘さんに引き寄せられて、好きになりすぎてしまうんですね」