「なんだか、俺のことばかり話してごめんね」
「いえいえ、貴重なお話を聞いてしまった気がします」
「あはは、誰もこんな男の話、興味ないと思うけど……、そうだなあ、佐藤さんは? 結婚願望はあるの?」
「私、ですか?」
「結婚しましょうかって言ってくれるから、本当にびっくりして。……彼氏はいないってことでいいのかな」
二度目のデートで今更だ。
すこし気恥ずかしくなって、クラゲを見ながら考えてみていた。自分の理想が、非現実的なものであることは知っている。
実は私の理想とは父と母と、姉夫婦の恋愛について聞き知ったものがすべてだった。
この2組の実体験を聞いて育った私は、世の中には優しい男性しかいないのだと信じ切っていた。
だからだろうか。壮亮に出会ったときには、かなり面を食らってしまった。
会うたびにブスとか馬鹿とか、のろまとか、そんなことばかりを言われる青春時代だった。
びえびえ泣いていたのは初めのうちだけで、そのうち顔に出ることもなくなってしまった。
今思い出してもちょっと悲しい記憶だけれど、容姿が綺麗じゃないことを自覚させてくれただけ良いのだろう。
やさしい人と付き合ってみても、なかなか感情を表現できなくて「何を考えてるのか、わからない」と別れを切り出されるばかりだ。


