内心は、毎日ハラハラしすぎて心臓が飛び出て落っこちてしまいそうだ。
「どんな人かしら。本当に気になる」
「そうですね」
「あ、興味ない?」
「いえ、そんなことないですよ」
興味がないと言うか、答えを知ってしまっている、とは言えずに、思わず俯きかけて自席に座りついた。
途中まで続けていた作業の画面を尻目に、目の前の席でにんまりしている先輩にたじたじになってしまう。
橘専務はああ見えて実は交渉が得意な人だし、どんなに聞かれてもさらりと受け流してしまうらしい。だからこそ、秘書の私と先輩に声をかけてくるのだろうけれども。
「橘専務の奥さん、誰だか聞いたことある?」
「え? ない、ですね」
「ふふふ、私、噂を聞いちゃったのよねえ。園部さん、あの人じゃないかって。ほら、営業の時に専務の下についてたでしょ?」
「園部さん?」
すこしもあたっていないのだけれど、できればあまり聞きたくない話題だ。そのうち自分までたどり着かれてしまったらと思うと気が気じゃなくなってしまう。
どう話題転換しようかと思考を巡らせて、誰かが入室してきた音で会話が中断されてしまった。
「うわさをすれば」
「どんな人かしら。本当に気になる」
「そうですね」
「あ、興味ない?」
「いえ、そんなことないですよ」
興味がないと言うか、答えを知ってしまっている、とは言えずに、思わず俯きかけて自席に座りついた。
途中まで続けていた作業の画面を尻目に、目の前の席でにんまりしている先輩にたじたじになってしまう。
橘専務はああ見えて実は交渉が得意な人だし、どんなに聞かれてもさらりと受け流してしまうらしい。だからこそ、秘書の私と先輩に声をかけてくるのだろうけれども。
「橘専務の奥さん、誰だか聞いたことある?」
「え? ない、ですね」
「ふふふ、私、噂を聞いちゃったのよねえ。園部さん、あの人じゃないかって。ほら、営業の時に専務の下についてたでしょ?」
「園部さん?」
すこしもあたっていないのだけれど、できればあまり聞きたくない話題だ。そのうち自分までたどり着かれてしまったらと思うと気が気じゃなくなってしまう。
どう話題転換しようかと思考を巡らせて、誰かが入室してきた音で会話が中断されてしまった。
「うわさをすれば」


