【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「ほら、早く戻れ」

「う」

「愛しの旦那が待ってる」

「ふぁい」


ぱっと手を離したら、上目遣いの柚葉がまるく笑った。


「その顔、マジでブス」

「ひどい」

「うそだよ、すげえきれいだ」

「うん? 今なんて言ったの?」

「なんでもねえよ、ほらいけ」


うそだよ、とつぶやいた声は、小さすぎて聴きとられなかった。不可思議そうな柚葉は、またかわいらしく首をかしげて笑っていた。


「じゃあ、あとでね」

「おー」


何度もちらちら見ながら、歩いては手を振っている。ばかかわいい姿にやられて、しばらく放心していた。


「かわいいかよ、くそ」


披露宴では、完璧に微笑む橘遼雅の隣で、ひらすら笑顔を浮かべていた。

ときおり横から男に声をかけられて、たのしそうにしているから、柚葉自身も、相手に悪い感情を持っているわけではないことが分かる。

柚葉の父は終始泣きっぱなしで、佐藤家の女性陣は朗らかに笑っていた。

橘涼子は一眼を抱えて、永遠に柚葉の写真を撮っていた。これは、かなり気に入られてしまっていそうだ。

どんなに写真を撮られてもすこし気恥ずかしそうに笑って、嫌な顔をしないところが柚葉らしい。


横から柚葉を眺める橘遼雅の瞳は、あきらかに惚れた女を見つめる男のものだった。

柚葉はそういう顔を向けられる機会が多いくせに、判別できないらしいからアホだった。