迷惑だなんて一度も言っていない。
結局その言葉は口に出せずに、目をまるくしている柚葉と見つめあった。肝心なところで甘い。だから柚葉を掻っ攫われてしまったのかもしれない。
俺には手に負えないから攫われてしまってよかったと思うようになるのか、それとも俺が手を引っ張っておけばよかったと思うのか、すこしも想像がつかない。
「なんかあったら連絡してこいっつったろ」
「……うーん」
「別に今まで通りで良いだろ」
「ええ、いいの?」
「誰がだめっつったよ」
「迷惑じゃない?」
「あ? どっかでめそめそされるほうがうざったい」
「じゃあ、金曜日のお昼も一緒?」
「やめろって言われてんの?」
「あ、ううん。遼雅さんは気にしてないと思う」
どうだか。
疑わしいとわかっているのに、結局指摘することを辞めてしまった。わが身より、柚葉の安全を考えてしまうから俺は本当にクソだ。
「じゃあまあ、いいんじゃね」
柚葉のさみしそうな目にほだされて、結局この日からもずっと金曜の昼を一緒に過ごす習慣を約束してしまった。
今では半分後悔している。
橘遼雅の柚葉への溺愛っぷりは、想像以上だった。
この日の俺はまだ知らずに柚葉の頬を抓っていた。


