俺も覚えているなんて言えなかった。ばかばかしい自分の精神に、笑ってしまいたい。柚葉は俺の言葉など気にすることなく「夢じゃないよ」と笑っていた。
「そうくん、ダンスする?」
「ああ?」
「学習発表会でしたの、覚えてない? くるくる~って回って」
「しらね」
その日の写真は、今も俺の部屋のフォトフレームに飾られてある。
柚葉にプレゼントされたフォトフレームに、その日の写真を入れたのは俺だ。
どうせ、柚葉は知りもしない事実だった。
即答する俺を無視して、レースがあしらわれた柚葉の指先が俺の腕に触れた。
「ダメ?」
「無理」
「すこしだけ」
「お前な……」
勘違いされるからやめろと何度も言ったのに、簡単に触ってくる。
咎めるようにじろりと睨みつけたら、柚葉がすぐに「そうくんだから触ってもいい」と自分ルールを発動させた。
「んだよそれ」
「だってそうくんも私のこと普通に触るし」
「花嫁が知らん男にべたべたしてたら嫌だろ」
「幼馴染に一番に見せたいって言ったら、笑って送り出してくれたよ」
それは間違いなく、嫌われたくないがために笑って送り出したのだろう。もしくは幼馴染が男だと思っていなかったのかもしれない。


