「遼雅さんは、あまいです」

「柚葉さんの甘さが伝線したのかもね」

「わたしは、あまくない、です」

「うん? それはどうかな。あとでたっぷり確かめさせてもらうよ」


やわい髪を撫でて、歯ブラシを手に取る。


「――柚葉さん、今日の朝食は、簡単にできるものが良いです」

「ええ?」

「そうしたら、もっと長く、きみに触れていられる」


宣言して最後にもう一度キスを捧げたら、瞳を揺らしたかわいいつまが、キッチンへと逃げ出してしまった。


「逃げるところなんて、もうないのに」


もう一度同じことを思って、一人で笑っている。

騙されやすいつまをどうやって捕まえてベッドに引き込むか、考えながら歯を磨き終えた。

鏡に映る、柚葉に毒された緩みっぱなしの表情に笑えてくる。


『橘くん、幸せそうだな』


会長に言われた言葉を思い返して、洗面所から出た。


柚葉が手に入るのなら、面倒な役職も悪くないと思えるから、きみは悪い、甘い砂糖菓子だと思う。


「柚葉さん、手伝いますよ」

「……遼雅さんは、いつもすてきすぎます」

「もっと好きになってくれる?」

「毎日だいすきで、こまっていますよ」

「あはは、もう。かわいいな」



今日も、きみに夢中になる予感しかしていない。






sweet sugar
(完)