引いてくれないかわいい柚葉が、歯ブラシを取ろうとした俺の腕にしがみついた。
かわいい気の引き方が、得意だと思う。それも無意識だからたちが悪い。
きみは極上にあまい砂糖だ。
「元気だから……、わたしがつくります」
「じゃあ、一緒に作ろうか」
「……やすんでほしいのに」
「柚葉の近くが、一番落ち着くんですよ。――だからこんなに、毎日抱きたくなる」
「だ……っ、ああ、もう。どきどきして、壊れちゃうから、だめです」
柚葉が本当に壊れるのなら、原因は間違い無く、俺が求めすぎていることだろう。
どこまでも気恥ずかしそうに俺の胸に顔をこすり付けて、ぎゅっと抱き着いてくる。反射的に抱き寄せて、ぐりぐりと押し付けられる頭を撫でた。
「柚葉さん?」
「うん」
「どうしたんですか」
「うーん」
「毎日がっつきすぎてて、呆れてますか」
「そんなことない、です」
きみに嫌われていないならそれでいい。あとのことはほとんどどうでもいい些末なことだ。
何度か呼びかけて、ようやく柚葉の顔が持ち上がる。その瞳のねつで、すべてのあまさが溶けてしまう気がするから、柚葉はやはり危険だろう。
「……どうしたんですか」
「ごはん、わたしがつくります」
「うん?」
「食べたら……、ゆっくり、できます、よ」
「そうですね」
「遼雅さん」
「うん?」


