【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】



引いてくれないかわいい柚葉が、歯ブラシを取ろうとした俺の腕にしがみついた。

かわいい気の引き方が、得意だと思う。それも無意識だからたちが悪い。

きみは極上にあまい砂糖だ。


「元気だから……、わたしがつくります」

「じゃあ、一緒に作ろうか」

「……やすんでほしいのに」

「柚葉の近くが、一番落ち着くんですよ。――だからこんなに、毎日抱きたくなる」

「だ……っ、ああ、もう。どきどきして、壊れちゃうから、だめです」


柚葉が本当に壊れるのなら、原因は間違い無く、俺が求めすぎていることだろう。

どこまでも気恥ずかしそうに俺の胸に顔をこすり付けて、ぎゅっと抱き着いてくる。反射的に抱き寄せて、ぐりぐりと押し付けられる頭を撫でた。


「柚葉さん?」

「うん」

「どうしたんですか」

「うーん」

「毎日がっつきすぎてて、呆れてますか」

「そんなことない、です」


きみに嫌われていないならそれでいい。あとのことはほとんどどうでもいい些末なことだ。

何度か呼びかけて、ようやく柚葉の顔が持ち上がる。その瞳のねつで、すべてのあまさが溶けてしまう気がするから、柚葉はやはり危険だろう。


「……どうしたんですか」

「ごはん、わたしがつくります」

「うん?」

「食べたら……、ゆっくり、できます、よ」

「そうですね」

「遼雅さん」

「うん?」