【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


かわいい脱走に頬が勝手に笑んで、ベッドをおりる後ろ姿に一人笑ってしまった。


「逃げる場所、もうないのにな」


ぽつりと出た声を、柚葉は聞いていない。

結局は俺にきちんと食事をとってほしいとか、ゆっくり休んでほしいとか、そういう理由で断られてしまうことを知っている。

甘いため息とともに立ち上がって、寝室を後にした。

柚葉は洗面所にいるだろう。想像しながら足を向けて、歯を磨き終えたらしい、かわいいつまと目が合った。


「困らせて、ごめんね」


柚葉の父のように哀愁たっぷりに囁いてみせる。

柚葉がそれに弱いらしいことは、すぐにわかってしまっていた。かわいい。柚葉はやさしい女の子だから、すぐに騙される。


「……こまったんじゃな、くて……、だって、遼雅さん、ゆっくり休んでほしいんです」

「うん」

「美味しいご飯、つくれるように頑張ります」

「ありがとう、愛してるよ」

「あ、う……」


それ、俺以外に絶対やらないでよ。

声に出さずに唇に触れて、音を鳴らして離れる。ミントの香りが鼻腔に触れた。


「ご飯、俺が作るよ」

「ええ?」

「昨日も無理させたから。……柚葉はソファでゆっくりしてて」

「え、やだ。だめです」