いくつか思考を巡らせているうちに、熟睡していた柚葉の瞼が持ち上がった。とろとろした瞳が、ゆっくりと俺の顔を見つめている。
あたりはすっかり明るくなってしまっていた。
起き抜けに笑う柚葉の唇に一つ口づけて、俺の好意を滲み込ませる算段を立てた。
わからないのなら、わかってもらうしかない。俺は男で、きみに夢中だ。手放すつもりはないし、どんな時にも触れていたいとさえ思っている。
「……柚葉、おはよう」
「お、はよう……?」
「――キスしようか」
「き、す」
「かわいい、俺の柚葉さん」
「りょ……」
そうしてこの日から、毎朝、遠慮なく柚葉の身体を貪ることを決めた。毎朝同じように繰り返せば、さすがにつよく求められていることには気づいてくれるようになった。
疑わないつまが、俺を抱き枕ではなく配偶者として見るようになるまでは、かなり時間がかかったように思う。
柚葉の実家で、あの夜立てた計算がほとんど狂ったことを思い浮かべて、瞼が持ち上がった。
「あ、遼雅さん、おきた」
瞼を2、3度瞬かせているうちに、腕の中のかわいいつまが、顔を綻ばせて笑っている。
幸福な瞳で、過去の夢を見ていたことを理解する。すべて、やさしい記憶だった。
昨日の俺は、柚葉の身体のすべてを愛し尽くして、疲れて眠る姿を見つめながら眠りについたのだろう。
「おはようございます」
「おはよう、ゆず」
半分覚醒していない頭で柚葉を抱き込む。匂いはいつもと同じで、体温はあの頃よりも、すこし高くなっている気がする。
「かわいい、ゆず」
「ええ?」
「俺の奥さん、かわいすぎる」
「遼雅さ、ん、寝惚けてます、ね?」


