「ありがとう。うれしいです」
「……それは、よかった、です」
「かわいい」
「かわいくない」
「あはは、わがままに付き合わせてごめんね。一緒に寝ようか」
あってないような理性でもって、柚葉の身体を横に下ろした。そのまますっぽりと身体を抱き込んで、布団をかける。
あやすように背中をさすったら、さっきまで警戒していたはずのかわいい人は、すぐにまどろみに足を踏み入れてしまった。
「……ん、ねむ、くなってきた」
「うん、かわいいね」
「かわ……?」
頭に唇を寄せて、背中を優しくなぞる。ただそれだけで暴れまわっていた欲望すらどうでもよくなるから、柚葉は魔性だ。
「ゆずは」
「うん」
「きみのご家族に会わせてくれて、ありがとう」
「……りょうがさん、かっこよかった、です」
「うん?」
「わたしには、もったいな、いくらい」
「俺はきみがいい」
ほとんど寝ぼけたような柚葉が胸に顔を寄せて、小さく笑っていた。
「りょうがさん、」
「うん?」
「あったか、い」
「あはは、よかった」
「すごく、おちつく、の」
「うん?」
「りょうがさ、ん、すき」
「……すき?」
「へへ、ぎゅって、してくれる、から」
やわく笑って、まどろみに落ちた。
意味深な言葉の深読みであっさりと夜は明けて、結局ほとんど寝ずに朝を迎えてしまった。
今日一日、内心かなり浮かれていたが、つまとなる女性が、俺を抱き枕として見ている可能性が高いことに勘付いてしまった。
そもそも抱きしめられると眠れると気づくには、以前にも、抱きしめられて眠った経験が必要だろう。


