【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】



「きみはキスしてくれないですか」


求めるだけでなく求められたいと思い始めた瞬間に、この感情が、抑えの利かないところまで来ていることを実感した。

ここまで強烈に、手元に置いておきたい欲求に駆られたことがない。自分自身が何度かぶつけられた執着に似ている気さえしていた。


「我慢するから。ご褒美に、柚葉からのキス、ほしいです」

「そうしたら、きす、もうしない?」

「柚葉が嫌なら、しないよ」


乱れた髪を耳にかけて、くすぐったそうにしている瞳に囁く。

執拗に迫られていたものを拒絶するとき、相手から「嫌ならしない」と言われると、嫌なわけじゃないと控えめに返したくなることを知っている。


「……いや、では、ないです」


想像通りの言葉で、胸の内が撫でられてしまった。

どうしてこうもかわいいのか。不安になるほどだ。義理の父が言っていた言葉の意味が思い返されてしまう。

たしかに、つねに不安がある。


じっと見つめていれば、狼狽えた様子の柚葉がゆっくりと顔を近づけてくれる。

本当にしてくれるのか、と驚いているうちに、唇にやわい熱が触れた。

簡単に解ける魔法のように離れて、すぐ近くで、伺い見てくる。その瞳のあまさで、今すぐにすべてを暴きたくなってしまった。

堪えて柚葉の身体を抱きなおした。