【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


突然じっと見つめ始めたかと思えば、今度はベタ褒めが始まってしまった。さすがに狼狽える。

何の試練なのかと身構えて、結局そこら中を褒めつくされて、一時間が経過してしまった。


「僕はつねづね、生命の起源について思いを馳せるんだが、顔立ちというのはね、人間が形成される前……」

「お父さん、遼雅さんのこと困らせないで」


真剣に聞き続けて、ついに柚葉が声をあげた。ここまでじっと俺の横に座っていた柚葉を振り返って、パチリと目が合う。


「遼雅さん、ごめんなさい。お父さん、仲良くなりたい時、こんな感じなんです」

「……そう、ですか。それは光栄です」

「だめです。そんなこと言ったら、続きますから……」

「柚葉、遼雅くんは聞いてくれるって」

「お父さん!」


事前情報では、すこし変わった父だと教えられていた。

すこしどころではないのだが、母親も姉も勝手にキッチンに立ったり、携帯を見せ合ったりしていたから、慣れた光景なのかもしれない。

近い未来、顔を合わせるだろう義理の兄の対応を想像して、苦笑をやり込めた。これは、佐藤家に来るたびに洗礼を受けてしまいそうだ。

それくらいで柚葉の側にいる権利が得られるなら、たいしたことではないのだが。