突然じっと見つめ始めたかと思えば、今度はベタ褒めが始まってしまった。さすがに狼狽える。
何の試練なのかと身構えて、結局そこら中を褒めつくされて、一時間が経過してしまった。
「僕はつねづね、生命の起源について思いを馳せるんだが、顔立ちというのはね、人間が形成される前……」
「お父さん、遼雅さんのこと困らせないで」
真剣に聞き続けて、ついに柚葉が声をあげた。ここまでじっと俺の横に座っていた柚葉を振り返って、パチリと目が合う。
「遼雅さん、ごめんなさい。お父さん、仲良くなりたい時、こんな感じなんです」
「……そう、ですか。それは光栄です」
「だめです。そんなこと言ったら、続きますから……」
「柚葉、遼雅くんは聞いてくれるって」
「お父さん!」
事前情報では、すこし変わった父だと教えられていた。
すこしどころではないのだが、母親も姉も勝手にキッチンに立ったり、携帯を見せ合ったりしていたから、慣れた光景なのかもしれない。
近い未来、顔を合わせるだろう義理の兄の対応を想像して、苦笑をやり込めた。これは、佐藤家に来るたびに洗礼を受けてしまいそうだ。
それくらいで柚葉の側にいる権利が得られるなら、たいしたことではないのだが。


