【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


俺と会話する時の柚葉の表情は、まだ萌さんと会話しているときのものには程遠い。その表情をこれからどう壊していけるだろうか。


「うまく行ったら、キスさせてください」


隠すことなくストレートに伝えて、柚葉の瞳が動揺に震えるさまを見つめていた。


「いい?」


念押しして言えば、「そんなに価値のあるものではない、と思います」と狼狽えた声が上がった。

柚葉は自分の価値にまったく気づいていない。この家で育つとそうなるのだろうか。


「じゃあ、いっぱいもらおうかな」

「ええ?」

「きみにとっては無価値だったとしても、俺にとっては一番欲しいものだから」


からかうような色を乗せて囁いて、いよいよ瞳が潤んでしまった。頬をなぞっていた指先を離す。


「約束ですよ」

「あ、え……、あの」

「行こう。あんまり待たせちゃ悪いから」


勝手に会話を終了させて、柚葉の腰に、軽く手を触れさせる。それだけでぴくりと肩が上ずって、何も言わずに柚葉がリビングへと足を伸ばした。


リビングは、柚葉のマンションの一室と同じように、至る所に写真が飾られている。また、すこし前に俺が渡した花とは別の花も花瓶に生けられていた。