嵐のような会話に思わず笑いそうになった。俺の瞳を見て、柚葉が首をかしげている。
こんなにも感情表現の上手な女の子だったとは知らなかった。
姉と一緒の時が一番自分らしく振る舞っていられるのかもしれない。まだまだ知らない魅力で溢れかえっていて、眩暈がしそうになるのをやり込めた。
入ってくださいと言いながら、母を追うように萌さんがリビングへと足を踏み入れる。
たのしそうな後ろ姿を見送る柚葉の横顔を、隠すことなく見つめていた。随分とかわいらしい顔だ。
ずっと緩みっぱなしになっている。
よほど姉に会えたことが嬉しいのだろう。年の離れた姉妹とは、こうも仲良くなれるものなのだろうか。
「遼雅さん? どうかしましたか?」
「いや、たのしそうで、見惚れていました」
「えええ、ええ?」
おどろく姿もまたかわいい。抱きしめたくて、振り払うように声をあげる。
「リビング、案内してくれますか?」
「え、あ、はい!」
柚葉があたふたとしている。
触れないようにと気遣っていたはずが、結局リビングに入った姉を追おうとしている柚葉の頭に指先が伸びた。
触れた感触で、もう一度柚葉がこちらを振り返ってくれる。
「うん?」
こちらを見上げるまるい瞳は、不可思議そうにゆっくりと瞬かれていた。その隙に、いつもキスをしたくなる。ふいに思ってかき消した。
「どうしました?」
「かわいいなと思っただけです」
「ええ?」
「抱きしめたくなって、我慢してる」
小さく、思った通りに耳元に囁けば、柚葉の目がまるく見開かれてしまった。


