そこまで悩ませるのなら、服を贈ればよかった。
「俺の実家に行くときは、プレゼントしても良いですか」と聞いたら、「遼雅さんが良いと思うものは、着てみたいです」と返されてしまった。
かわいらしい。
この場とは全く関係のないことを思いだせるくらいには精神に余裕がある。
ましてや柚葉に似た可愛らしい顔立ちの女性が二人もいるとなると、緊張するどころか、安心感すらあるから不可思議だ。
佐藤家は、本当に砂糖で出来ているのだろうか。
ここにはいない柚葉の姉の結婚相手も、同じことを思ったに違いないだろう。
二階建ての一軒家は、一階が父親の書斎と夫婦の寝室、リビングで構成されているらしい。
二階が姉と柚葉の部屋になっていると聞いていた。
部屋を見てみたいと言ったら「卒業アルバムがあるから恥ずかしいです」と白状されたが、言われてしまうと見てみたくなるのが、人間の心理だ。
軽く笑んでいれば、目の前にいる柚葉の姉が、うっと声に詰まってしまった。これはもしかすると、佐藤姉妹共通の反応なのだろうか。
かわいらしいから、危険な反応だと思う。できれば俺以外にはやらないでほしい。そのうち口から出てしまいそうだ。
「柚の彼氏……、きらきらしすぎている……!」
「あ~! わかる。遼雅さん、すごく、きらきらしてるの」
「りょうがさん!? お名前もすてきだなあ。どうぞどうぞ、リビング入ってください」


