突如現れた男に狼狽えていたのは家主の父親だけで、母親と柚葉の姉——萌さんは、大歓迎ムードで迎え入れてくれた。
事前に聞いていた情報をもとに、駅前で花束を購入して向かったら、女性陣が一挙に色めき立ったのが印象的だ。
「ええ~! 柚の彼氏、すっごいかっこいい!」
にこにこと微笑んでいる女性に、柚葉がもじもじと笑っているのが見えた。
玄関の先で、初老の男性がそわそわとこちらを伺っているのが見える。軽く一礼したら、おどろいたのか、奥に引っ込んでしまった。
「さあさあ、どうぞ。散らかっていますけど」
「あがってください!」
落ち着いた雰囲気の女性は、柚葉の母親で間違いないだろう。
柚葉の性格とは違い、しっかりした、意志の強い芯のまっすぐそうな女性だ。柚葉はどちらかというと、父親似なのかもしれない。
好奇心旺盛そうな女性は柚葉の姉で、かなり前に結婚して家を出ていると聞いていた。
柚葉が結婚報告をすると聞いて、わざわざ実家に帰ってきてくれたらしい。
少ないデートの合間にも何度も姉の存在については聞かされていたから、よほど仲のいい姉妹なのだろう。


