本当ははじめに買いに行ってあげてもよかったのに、帰したくなくて忘れたふりをしていただけだ。
「いいよ。気にしなくて」
「だめです。おはずかしい」
「結婚したら、全部一緒だ」
「そ、うですけど」
「じゃあ今から一緒でも構わないと思いませんか」
くるりと丸め込まれた柚葉が、首をかしげつつ曖昧にうなずく。その姿を笑って背中を押した。
「じゃあ着替えておいで」
「ほんとうにいいんですか?」
「俺はその格好も好きだけど」
「きがえ、ます」
「はは、うん。行っておいで。恥ずかしがりでかわいい柚葉さんのお着替え、覗いたりしないから安心してください」
昨日全部見た男に囁かれて、柚葉が頷きながら「ありがとうございます」と囁いて寝室に消えた。
すこしも安心できない男の前にいるのに、どうしてこうも信頼できるのだろうか。
服に着られた柚葉と朝食を摂って、またとろけそうに微笑む姿を堪能している間に柚葉の服の洗濯が乾燥まで終了してしまった。
慌てて服を着替えた柚葉をさんざん抱きしめて口づけたら、いよいよまた理性が壊れてしまいそうで家を出る。
「車で送ります」
「え、そんな、申し訳ないです」
「朝方までたくさん無理させたので」
「……ありがとうございます」
これ以上その会話をつづけるのが賢明ではないことを察したのだろう。笑って頭を撫でれば、安堵の表情がやさしく緩んだ。


