「かわいい」
「ええ? なん、」
ちゅう、と吸い付いて、柚葉の声を奪う。
何度か繰り返して、柚葉の瞳がとろけそうになっているのを見つめた。どれだけ繰り返しても飽きがこない。
ぼうぜんとしている頬を撫でて「少し待ってて」と囁いた。
本当に、朝からベッドに押し込んでしまいそうだ。危うい理性に苦笑しつつ寝室に入って、きれいに整えられた寝具に眩暈がしてしまった。
俺が出て行ったときは、荒れ放題だったはずだ。
すべて整えてからあの姿で出てきたのだと思うと、胸の内にぬるいやさしさが灯って、それが愛おしさなのだとすぐに直感できる。
「たまんないな……」
早く結婚したい。
毎朝抱きしめていないと、もう生活に満足できなくなってしまいそうだ。
クローゼットから適当に“お洋服”を引っ張り出して、黒のロンティーとスエット生地のハーフパンツを選んだ。その足ですぐにリビングに戻る。
所在なさげな柚葉がぽつりと立ち尽くしていて、俺が見えると花が咲くように安堵のような笑みを色付けた。
ずっとその顔を見つめていたい。
「かわいいなあ」
「はい?」
「ううん、座っててよかったのに。これなら着れるかな。下着は……、買ってこようか?」
「あ、いえ、だ、いじょうぶです。……あの、お洋服はクリーニングしてお返しします」
そっちのほうがエロくて危険だと思うんだけど。頭に浮かんでいたのに、口に出すことを取りやめた。


