【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「どうしようもなく、あまやかしたい」

「な、にを?」

「奥さんになる人のことは、とことんあまやかしたいです。ダメですか?」


きみのことだよ。

こころの中で囁くおぞましい執着心を、綺麗に隠して笑った。


逃がしてはあげられない。

ほしくてたまらなくなってしまった。

契約結婚だと言い聞かせて、勝手に俺のものにする。そのうち敬意と好意を勘違いして、俺を愛するように仕向ければいい。

今まで考えたこともないようなシナリオが簡単に頭に浮かんで、こびりついた。

ずっとこうしたかったのだろうか。

わからない。ただ猛烈に惹かれていることだけが確かで、あとはもう、ほとんど本能的な行動だっただろう。


簡単な交渉術を使った。

着地予定地は婚姻関係を結ぶことで、うまく行けばその契約を早期に繰り上げられる。


「――じゃあ、来週は柚葉さんのご両親に、挨拶に伺います」


すこし酔った女性に仕掛ける罪悪感はあっても、支えるように触れたあまやかな匂いにどうでもよくなる。

もらってしまおう。勝手に決めつけて、タクシーに乗り込んだ。


「柚葉さん、帰れますか?」

「う、ん……、かえ、らなきゃ」

「ゆずはさん」

「ごめ、んなさい、すごく、酔って……」

「俺がついていますから、大丈夫です」