【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「俺のこと、好きにならなくて良いです」

「あ、う」

「仕事も続けて良いです。……ここは会長の後ろ盾もあるので、絶対です。もちろん家庭に入りたいなら、それもいいです。俺が働きます。なるべく楽しく、あたたかい家庭にしたいです」

「え、と」

「もし仮に、俺が誰かを依存させるようなことを仕出かしたら、止めてもらえますか?」

「それは、あの、いつでもできますが……」

「ありがとう」


畳みかけるように条件を提示すれば、慣れない交渉に狼狽える、かわいい瞳と見つめ合えた。

すこしアルコールを入れられてしまった可哀想な女の子が、必死に頭を回そうとしている。

咎めるようにそっと手を握って、一つひとつの指を絡み合わせた。


何も考えなくていい。

頷くだけで、混乱から解放してあげられる。じっと見つめて、ぐるぐると回るかわいい瞳を観察していた。



「……だから、抱きしめて眠ってほしくて」

「そうされればゆっくり眠れるんですか?」

「そう、ですね、ええと……。それくらい、です」

「なるほど。わかりました。かわいいお願いだ」


指先をなぞる。

熱を込めて、できるだけ直接的ににじませる。

冷えきっていた指先は、すでに俺のものと同じ温度に変わってしまっていた。