【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


あきらかに都合の悪いことをひねりつぶされているだけだろうが、きみがかわいいと思うのならば、それでいい。

もっと柔らかいところだけで生きていてほしいと思わせるから、おそろしい魔性だった。

隣り合って歩いても、好意の類を感じることはない。指先が触れた瞬間、ぱっと離れられてしまった。


「ご、ごめんなさい。近づきすぎて」


俺が勝手に触れさせただけだ。おどろいた顔をしている女性にすこし笑ってしまった。


「あはは、こんなに魅力的な女性に近寄ってもらえて、光栄ですよ」

「みりょくてき……?」


心底意味が分からなさそうな顔をされて、こちらも驚いてしまった。

まさか本当に自分の容姿について自覚がないとは思わなかった。こちらとしては、この顔立ちだからこそ、大澤茜の怒りも加速したのだと理解していた。


「大丈夫です。それより、婚約者さんは……大丈夫ですか? 私は橘専務のほうが心配です」

「きみは……」


殴られた勢いで、鼓膜がすこし破れてしまったと聞いた。

もう治りかけているようだが、たっぷり休養するのが好ましいだろう。部外者が一人だけ怪我を負う結果になってしまったのに、佐藤柚葉は気にした様子もなく、こころから心配しているような声でつぶやいていた。