新卒社員がいきなり秘書につくという異例さからも、その容姿のうつくしさからも、近寄りがたい存在として眺められている。
遠目から見ている分には、冷たい印象を受ける女性だ。
近づくから、よくない。
「失礼します」
「はい」
いつも丁寧にノックをしてから入室してくる。
うつくしい仕草で歩いて、手の届きやすい位置にカップを置いた。
すぐ近くで甘い匂いが香る。
思わず引き留めて抱き寄せたくなってしまうような匂いだと言ったら、かなり引かれてしまうだろう。
隠してカップに手を伸ばした。
「ありがとう」
「いえ」
無表情なようで、瞳がよくものをいう人だ。
椅子に座ったまま、頭を下げ終わったその人の目をじっと見つめて、軽く首を傾げられた。
遠目から見知っていた時、この女性が人助けをしたという話におどろいた記憶がある。今になってみれば当然のように思えてならないから不思議だ。
「疲れて見えてしまいましたか」
「え……、いえ。そうではなくて」
すこし困っている。
瞳が震えて、気まずそうな様子だ。部下に心配させるほど疲れているらしい。すこし息抜きをしようと眼鏡を外したら、かわいらしい目がぱちりとまるく瞬かれた。
「うん? どうしましたか?」
「あ、いえ……、本当に休憩する気になってくださったんだなと、すこし、うれしくなりました」


