【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

もう、私がここに立っていることを予想していたらしい人が、扉が閉まり切る前に両手で抱きしめてくれる。


「おかえりなさい」

「ただいま、柚葉」


すこし前にも会っていたはずなのに、おかしい。

やっぱり遼雅さんはきちんと公私を分けていて、お昼休み以外は完璧な上司にしか見えないから不思議だと思う。


ぎゅうぎゅうと抱き合って笑えば、身体なんてすぐに熱くなってしまった。


「……あたたかいです」

「それはよかった。今日もかわいいね」

「かわいくは、ないですけど」

「あはは、そう? 俺にはかわいく見えます。すきだよ、ゆずは」


以前までは好きなんて全然言ってもくれなかったのに、あの日以来、遼雅さんの口癖に「すきだよ」が加わってしまったような気がする。

いまだに新鮮に照れてしまうから、遼雅さんのちょっとしたからかいなのかもしれない。


「あ、そうだ」

「うん?」

「今日、会長にからかわれちゃって」

「会長?」

「遼雅さんとの結婚生活のことです」

「ああ、今日面談だったもんね。何だって?」


ぎゅっと抱きしめてくれていたところから、そのまま簡単に身体を持ち上げられてしまった。


「きゃ、」

「ゆずは、ちゃんとご飯食べてる?」