【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「抱き枕以外に、俺の価値はない?」


ゆっくりと確かめるように囁いている。吃驚して振り返ろうとしても、首筋に吸い付かれたら、うまく反応することもできなかった。


「ん、どう、いう……?」

「柚葉さんと結婚できた幸運な男だって見せびらかすために、あと何が必要かな」

「なに……? ひつ、よう?」

「どうしたら、柚葉さんは俺ものになってくれますか?」


答えはもう、ずっと前から知っていそうな人が囁きかけてくれる。

私の手を恋人のように繋いで、肌に触れて、誰よりも近くで笑っている人が、もう一度囁いた。


「きみがほしい。――もうずっと、柚葉だけがほしい」


あつい告白で、思考回路の全部がくだけちった。

振り返ったら、どろどろにあまい瞳が、うつくしく輝いて、私だけを見つめてくれている。

すてきな予感がする。瞬きの隙間に愛がこぼれ落ちてくる。


「柚葉さん、」

「は、い」

「俺のこと、どうやったら好きになってくれますか?」


いつものようにやわく首をかしげて、誘うように囁いている。

私の答えなんて、やっぱり知っていそうだと思った。

遼雅さんは何でもお見通しだ。

手を取って、甲に口づけてくれる。愛情深いまなざしで胸が詰まってしまった。あえて口にして欲しくてあまえている人のように見えて、こころの中が、遼雅さんまみれになってしまう。

すきをどうしよう。どんなふうに伝えればいいのだろう。ただ胸がいっぱいで、拙い答えが口からこぼれた。


「……ここにいてくれるだけで」

「うん?」

「いてくれるだけで、じゅうぶんです」