「抱き枕以外に、俺の価値はない?」
ゆっくりと確かめるように囁いている。吃驚して振り返ろうとしても、首筋に吸い付かれたら、うまく反応することもできなかった。
「ん、どう、いう……?」
「柚葉さんと結婚できた幸運な男だって見せびらかすために、あと何が必要かな」
「なに……? ひつ、よう?」
「どうしたら、柚葉さんは俺ものになってくれますか?」
答えはもう、ずっと前から知っていそうな人が囁きかけてくれる。
私の手を恋人のように繋いで、肌に触れて、誰よりも近くで笑っている人が、もう一度囁いた。
「きみがほしい。――もうずっと、柚葉だけがほしい」
あつい告白で、思考回路の全部がくだけちった。
振り返ったら、どろどろにあまい瞳が、うつくしく輝いて、私だけを見つめてくれている。
すてきな予感がする。瞬きの隙間に愛がこぼれ落ちてくる。
「柚葉さん、」
「は、い」
「俺のこと、どうやったら好きになってくれますか?」
いつものようにやわく首をかしげて、誘うように囁いている。
私の答えなんて、やっぱり知っていそうだと思った。
遼雅さんは何でもお見通しだ。
手を取って、甲に口づけてくれる。愛情深いまなざしで胸が詰まってしまった。あえて口にして欲しくてあまえている人のように見えて、こころの中が、遼雅さんまみれになってしまう。
すきをどうしよう。どんなふうに伝えればいいのだろう。ただ胸がいっぱいで、拙い答えが口からこぼれた。
「……ここにいてくれるだけで」
「うん?」
「いてくれるだけで、じゅうぶんです」


