精いっぱい茶化してみたのは、きっと伝わってしまっただろう。
実際にそんなことがあったら、私は何もできずにきっと号泣してしまうのだと思う。じっと見つめたら、あまい瞳の遼雅さんが、もう一度やさしいキスをくれた。
「柚葉さんは、あまやかしすぎです」
「でも、だって、私の携帯が見たいとか、そういうことじゃないんですよね」
目のまえの瞳に問いかけて、すこし瞳孔が震えてしまったのが見えた。これにはさすがにびっくりして、目が丸くなってしまう。
「私の携帯、見たい、んですか?」
「……み、ない」
見たいのか。
びっくりしてしまった。遼雅さんにそんなにも関心を持たれているとは思わない。
残念ながら私の携帯は、遼雅さんと姉と幼馴染くらいしか連絡を取り合っていない。
そのほかのお友達はだいたい壮亮を通して連絡をしてくるから、この携帯はほとんど遼雅さん以外の人から連絡がこないものなのだ。
たぶん、一度見てしまえばすっかり安心できるだろうと思って、すぐ近くに転がっている携帯を手に取った。
後ろで遼雅さんの肩が、ぴくりと動いたのを感じる。
「ええと、ぜひ、見て……、ください?」


