「んっ……りょ、……っあつ、い」
「ん」
「りょう……っ」
「もうすこし」
もうすこし、あとちょっと、もっと、と繰り返し囁かれて、とうとうくたりと力が抜けてしまった。
遼雅さんの胸に身体を預けて瞼を下ろしたら、耳元で低い笑い声が響いた。
「ごめんね。つい、我慢できなくなってしまいました」
「……ぜんぜん、てかげん、してくれない」
「うん、柚葉がかわいいのも、全然手加減してくれないから、おあいこにしてほしいな」
「何、言って」
「よいしょっと」
反論も聞かずに力の抜けた体をくるりと回して、遼雅さんの背中に背を向ける形で抱えなおされた。
遼雅さんのあぐらの上に座っているからか、すぐ横でたのしそうに笑う声が聴こえてくる。
「指、見せて」
「う、ん?」
「指輪」
熱を帯びた節くれた指先が、腕から手首をなぞって、私のものを掬うように手をつなぎ合わせた。
お風呂の中で見た通り、傷のない指輪が綺麗に輝いている。
私の左手と遼雅さんの左手をつなぎ合わせているから、二人の薬指に嵌っているものが、同じデザインになっていることは一目瞭然だ。
「次出社するときは、嵌めて行ってくれないかな」
誑かすように囁いて、有無を言わせず口元に私の手を持って行ってしまう。


