「俺は、かわいい奥さんの顔を見ながら、お喋りしたいです」
「う、」
「キスもしたい」
お風呂に入る前の焦燥なんて、すっかり忘れた遼雅さんが、いつもと同じくからかうようにやさしく笑っている音が聞こえた。そのやさしい音色を聞くだけで、遼雅さんの笑みが浮かんでしまうからずるい。
「ゆーず」
「う、なんです、か」
ちらりと顔をあげたら、やっぱり想像通り、うつくしいのにどこか人懐こい、子どもみたいな笑みを浮かべた遼雅さんと目が合った。
瞬く間に顔を寄せて、唇に触れられる。
「よかった。ずっとキスしたかったから」
「……さっきもしました」
「俺はずっとしていたい」
ちゅ、と繰り返し触れられて、むっと拗ねたような顔を作ってみたのに、どこまでもあまく笑って返されてしまう。
「なあに。そのかわいい顔? 俺のこと煽って遊んでる?」
「睨んでいるんです」
「こんなにも、かわいい目で?」
「う……、もう、遼雅さん、あまやかしすぎです」
「――だってきみが、可愛すぎるのが悪いんだ」
すこしも効果は、ないみたいだ。
むしろ、話をする隙もないくらいにキスが降りかかってきて、ただ遼雅さんのルームウェアにしがみつく。


