“自宅にはちゃんとつきましたか”
“柚葉さん?”
“何かあったなら、連絡ください”
“柚葉?”
私は自宅にたどり着いたことすら連絡し忘れていたようだ。おどろいて、遼雅さんが動揺していた意味がよく分かった。
いらぬ心配をさせてしまったらしい。
特に部長のことがあってから、遼雅さんの心配性は加速している気がする。気づいていたのに本当にうっかりしていた。
好きな人に連絡を無視されてしまったら、どんな気分だろう。
遼雅さんは基本的に連絡が丁寧な人だから、もしも突然途絶えてしまったら、私は心配しすぎて携帯から手が離せなくなってしまいそうだ。
すこし考えただけでもぞっとしてしまった。
大変なことをしたのだと思う。あんなに温厚な遼雅さんが動揺しているところを見る機会なんて、そうそうないと思う。
「……柚葉?」
「わあっ」
一生懸命想像している間に、フローリングに座っている私の隣に、遼雅さんがしゃがみこんでいる姿が目に入っていた。
考え込みすぎてしまったらしい。
遼雅さんはまた髪を濡らしたまま私の顔を覗き込んで、手元に携帯があるのを目視したら、すこし眉を下げてしまった。


