【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


すこし気分が落ち着いたのだろうか。

ソファに座っている私の横に立って、尋ねてくれる。拒否する理由もなくうなずいたら、わたしのあごに手を添えて、屈みながら唇を触れさせてくれた。

やさしい唇にあまやかされて瞼をあげたら、遼雅さんがとっておきの笑顔を見せてくれているのが見えて、同じように笑ってしまった。


「よし、元気出ました」

「本当ですか? よかったです」

「柚葉さんのおかげです」

「ふふ、それならなお、よかったです」

「きみのおかえりがたまらなく好きだ」

「うん?」

「今日も柚葉がかわいいって意味だよ」


さらりと茶化して、立ち上がってしまう。

何も言い返せないうちにやわく髪を撫でた遼雅さんが、バスルームへと向かってしまった。一人取り残されて、やさしい熱が乗った唇に指先で触れる。

思い返すだけであつくて、ソファに倒れ込んでしまった。

すきすぎる。どうしたらいいのか、わからない。

手持無沙汰でごろごろして、立ち上がっては鞄の近くまで歩く。フローリングに座り込んで、すっかり存在を忘れていた携帯を取り出した。

画面に残る連絡に、指先が固まってしまう。


「え、ええ」


メッセージと着信履歴が、合わせて20件も残されている。すべて相手は橘遼雅になっていた。

連絡を忘れてしまうことは、壮亮にも何度か怒られたことがあった。