【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

壮亮に褒められたら、いつも嬉しい。

勝手に褒められた気になって笑っていたら、やさしい力で頭を叩かれてしまった。


「アホ、顔キモイ」

「あ、やだやだ。にまにましちゃった。気を付けよう」


エントランスに足を踏み入れて、自分の頬をぺたぺたと触ってみる。

横で呆れた顔をしている幼馴染に首を傾げかけて、ぴたりと止めた。やるなと言われたのを思い出して顔を真顔に戻せば、ますます呆れられてしまう。


「柚、あいつと結婚してから顔の表情、緩みっぱなしだな」

「う、ええ……! やっぱり、そう思う?」


最近壮亮に注意される機会が増えた気がして、焦っていた。やっぱりうまくごまかせていないらしい。

遼雅さんの秘書にしてもらえたのもこの真顔のおかげだから、何とかして治したい。

どうしようか、と壮亮を見つめたら、可哀想なものを見るような瞳と視線が絡んだ。


「お前に真顔は無理だ。あきらめろ」

「ええ、前はうまくできてるって、言ってくれたのに!」

「もう無理だ。そのままで行け」

「ブスで嫌われないかな……」

「今の発言、聞いてたのが俺だけだったことに感謝しろよ、クソ」

「お化粧直してから戻る……」

「まあ、あれだ、顔のことは……。まあ、それなりにかわ……、か、か、か、かわいいから! 気にしなくて良いって……、おい……! おい!? 一人で喋らせるな! ボケ!」


後ろで何かを言っている壮亮から離れて、ふらふらと足を動かした。