「……お前が橘に騙されずに来れんなら、まあ……、続けてやらないこともない」
「え? 本当!? やった! じゃあじゃあ、遼雅さんも来て三人でご飯は?」
「却下」
「う~ん……」
「柚の説得次第だ」
一緒に赤信号で足を止めて、壮亮が笑う音を聞いている。
たしかに説得は難しそうだ。
最近は土日にお買い物に出る時でさえ、一人で行くと言うと、すこし心配そうな顔をされてしまうようになった。
結局遼雅さんの目に弱い私は、一日中一緒に映画を観たり、二人でお散歩に行ったりするくらいにとどめてしまう。
遼雅さんはずっと抱きしめていてくれるから、離れがたいのも大きな要因だ。
「遼雅さん、心配性なんだよね。あんなことがあったから、わかるんだけど」
「お前の近く居たら、誰でも心配性こじらせるっつうの」
「そうかなあ」
「そうかなあ、じゃねえわ。相変わらず本当かわいいな。心配にもなるわ」
ぐちゃぐちゃに髪を乱された。
壮亮が珍しくブスと言ってくれないから、すこしおどろいてしまった。ぼうぜんと見つめていたら、壮亮にまた笑われてしまう。
「なんだよ」
「ええ、だって」
「うるせえブス、早く帰んぞ」
「あ、うん、待って」
聞き間違いみたいな、やさしい声だった。


