「あっ……、ええと、ブスなのに、秘書してるから、目立ってる……?」

「……いや、もういい」


また呆れられてしまった。

今日も壮亮が頼んでくれたビーフシチューオムライスを頬張りながら、ここへ来るまでの遼雅さんの恨めしい視線を思い返して苦笑してしまう。


『今日は、そうくん、ですか』

『そう、ですね。お弁当、食べてくださいね』

『じゃあ、俺が満足するまでキスしていい?』

『……だめ、です』

『困った顔もかわいいから、本当にまいる』

『もう、行かないと』

『……危ないことがあったら、絶対連絡してください』

『わかってます』

『飛んでいきます』


押し問答をして、結局部屋を出るまえに、軽いキスをされてしまった。

口紅を塗りなおしたばかりだったから、薄っすらと遼雅さんの唇についてしまった。


『あ……、遼雅さん、口紅が』

『ついた?』

『ティッシュ……』

『残しておいてもいいですよ』

『だめです! 使ってください』

『あはは、慌ててかわいい』

『もう!』

『柚葉さんが、拭ってください』


屈んだ遼雅さんの綺麗な唇をやさしく拭っているところを、真正面から観察されていた。

ぱっと手を離してみれば「柚葉さんは塗りなおさないで行ってください」と囁かれて、今度こそ拒否できずに頷いてしまった。