【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】


「――どんな技で、誑かした?」

「っひ、わ、わたり、ぶちょ……」


腰を抜かして、ただ見上げるしかない。その人は暗がりの中でもわかるくらいに、不気味な表情を浮かべている。

怒りとも愉悦とも取れるような、おそろしい顔だった。

目が合ってたまらず声に出た。

渡総務部長だ。


どうしてこんなことをしているのかわからない。混乱して後ろへ下がろうとしても、ただ壁に張り付くだけだった。


「な、なんで」

「なんで? なんでだろうな? お前が誘ってきたんだろ」

「な、に……を」

「しらばっくれんなよ。俺に惚れてるんだろ? 毎回教育してやっただろ。お前はわかってないから、俺がたくさん教えてやったよな」

「ぶ、ぶちょ……」

「柚葉のためにやってやっただろ? それなのになんだ? あんまりさみしくて、浮気したのか?」

「なに、いって……」


ゆっくりとしゃがみこんで、顔を寄せてくる。その目が血走っているのが見えて、喉がひりついた。

こわい。どうしようもなくこわい。


ただおそろしくて、言葉にならない。


「犯してやる。お前が誰のものか、ちゃあんとわかるように、いますぐ、ここで」

「や……、めて」

「純情ぶんなよ、クソあばずれが」